[実施日] 2005/12/06
[ﾙｰﾄ&ﾀｲﾑ]
　JR彼杵駅08:25-->２６聖人乗船地-->千綿宿郷-->10:10[8.2Ks]JR千綿駅前-->江の串
-->才貫田-->11:40[15.7Ks]鹿ノ島-->松原本町-->12:15[18.2Ks]国道・食堂12:50-->昊天宮
-->竹松本町-->首塚-->胴塚-->14:55｢28.1Ks]獄門所跡-->15:15[29.7Ks]本経寺
-->15:45[29.7Ks]大村・本町16:00-->観音寺道-->国立大村病院横-->17:10[39.1Ks]JR岩松駅

　年内に３日間で長崎までの継歩を完了しようと、急遽旅立った。そのため事前調査が不十分で、見残しがあったり効率の悪いルート取りがあった。
名古屋 19:50発、ハウステンボス行き夜行バスに乗り、07:40 佐世保駅前で降りる。JR大村線で彼杵へ。

[写真_01]彼杵の鯨問屋？ 　駅前すぐに「鯨」の看板を立てた建物があり、異様な臭いがする。向かいには鯨料理の食堂。 町役場の屋上にも鯨のモニュメント？ この先、２Kmほど進んだ国道にも鯨肉を売る店があった。 彼杵と鯨はどういう関係？ 地形図を見ても、港は遠洋漁業の基地のようにも見えないし．．．。 下調べが足りなかったせいで、ささやかな疑問を持ったまま先へ行ったが、大村の街に着いてからこの疑問が解けたので後述する。

旧街道が直角に曲がる彼杵宿思案橋跡の辻で、長崎街道を取材中の長崎放送のレポーターに取材を受ける。
「名古屋から夜行バスで来て、今から３日で長崎まで歩く。長年かけて京都から、山陽道、長崎街道の旧道をここまで歩き継いで来た」ことなどを話す。取材はここから嬉野温泉へ向かって進む、とのこと。地方放送なのでどの程度放映されたか判らない。
彼杵川を渡る橋の手前に万部塔。

	[写真_02]日本二十六聖人乗船場跡の碑 　彼杵川の右岸を河口に行くとこの碑と説明がある。碑の下の壁にタイル製の絵と解説文が付いているほか、別な詳しい解説版がある。 「豊臣秀吉のキリスト教禁教令により司祭ペトロ・バウチスタ以下２６名が捕らえられ、陸路長崎に送られるとき、1597（慶長7）年2月4日にここから水路を時津に渡り、翌日に長崎で処刑された」と。
	[写真_03]甌穴の地蔵さん 　旧道を少し行った彼杵宿郷の路傍に小さな地蔵堂があった。新しい花がいっぱい供えられている。よく見ると仏像や地蔵尊があるのではなく、川の流れで出来る甌穴らしきものが二個。こんな素朴な信仰が今も存続してるのもいいな、と一礼して過ぎる。

長崎街道旧道は千綿宿郷から松原までは、国道３４号線と大部分離れた道となり、旧道の雰囲気が残っている。
海岸から一段上がった丘の上の道は大村湾の見晴らしもよく、歩いていて気分がいい。

[写真_04]瀬戸郷の六地蔵。 一石の廻りに六体の地蔵尊を彫り込んである。	[写真_05]六地蔵の少し先

千綿駅手前は海岸に出るが千綿駅前からまた丘の上の道に上がる。

[写真_06]平原籠立場跡から大村湾と西彼杵半島の山。 　近くに平原一里塚跡。

解説書に里郷江の串に江串三郎入道塚があるという。どんな人物だろうと立ち寄ってみる。
江串三郎はこの地串島に城を構え、建武の中興 1333（元弘3）年に肥後の菊池氏らと後醍醐天皇方の尊良親王を迎えて鎌倉幕府軍と戦うが戦死。こんな所にも建武の中興の歴史があったのか、と感慨。

[写真_07]手前は串島、遠景に虚空蔵山。	[写真_08]茶畑と地道の旧道、里郷才貫田付近。

松原の手前で踏切を経て海岸に出る。佐屋の御前という道祖神を祀る突き出しと弁財天を祀る鹿ノ島の突き出しに挟まれて松原漁港、レジャーボートも繋留されている。
松原は旧宿場で今も旅館があり、旧道の町並みが残る。江戸時代には鍛冶屋が多かった所といい、今も稼働してる一軒を見かけた。

[写真_09]松原本町の伊東家屋敷 　1190（建久元）年、源頼朝の重臣工藤祐経がここを領地として賜り、現地管理者として伊東氏が下向したことに始まるという。 鎌倉幕府は初期からこんな遠隔地まで統治出来てたのか、と感心する。

松原本町の町並みを抜けて国道に出た所のレストランで昼食。
右手、海岸の埋め立て地には相当大規模な九電大村火力発電所、さらに増設工事中らしい。
しばらく国道を行く。

[写真_10]昊天(ｺｳﾃﾝ)宮神社 　彼杵郡の総鎮守で平安時代以降、大村氏の守護神。 ご神体は８世紀・和銅年間、行基の作という。 １５世紀、応仁の乱の余波で領主・大村純伊は隣国の有馬氏に攻められて領地を離れるが、六年後に奪回・本領復帰して、昊天宮に参詣した、と。

大村は城下町であり、キリシタンの歴史の街。
１６世紀後半、大村氏と有馬氏は洗礼を受けてキリシタン大名となる。1592年の欧州派遣使節の四少年のうち二人が大村藩からだった。
島原の乱後は禁教・弾圧はさらに厳しくなり、1657（明暦3）年に608人の隠れキリシタンが検挙された。釈放された99人以外は他藩へも送られて拘留・処刑され、大村では131人が放虎原の斬罪処で処刑された（郡くずれ事件）。処刑者は獄門所で２０日間さらし首にされ、首と胴は別々の場所に埋められた。これはキリシタンの妖術により、首と胴がつながって復活することを恐れたからという。首塚と胴塚は600ｍほど離れている。哀しい歴史の場所を訪れ、合掌。
放虎原と妻子別れの石の遺跡に立ち寄らなかったのは心残り。

[写真_11]首塚（原口町）	[写真_12]胴塚（桜馬場）	[写真_13]獄門所跡は松並町街道沿い

大村のもう一つの面は戦前は軍都であり、日露戦争以来の陸軍の連隊、その後の海軍飛行場、海軍航空工廠があった。そのため戦時には米軍の激しい攻撃を受けた町だった。

	[写真_14]本経寺の大村氏墓のうち16代?大村純伊の墓 　キリシタン大名・大村氏は禁令の後、熊本の加藤清正に勧められて日蓮宗に改宗し、本経寺を建てて菩提寺とした。 寺の塀は百間塀といわれ非常に長い。境内には代々藩主や一族の墓がある。２万７千石の小藩にしては大きくて多様な凝った作りの墓石が多い。
	[写真_15]大村宿本陣跡 　現在は本町通りアーケード商店街のうどん屋と後背地の浜屋デパートになっている。本陣は建坪200坪の壮大なもので、鯨長者・深沢儀太夫の寄進によるものだった。 　深沢儀太夫は紀州太地で鯨漁を学び、故郷に帰って五島列島を根拠地に西海の捕鯨を指導して藩の諸士の格にも列し、膨大な利益を得た。藩の財政や社会事業に大きく貢献した。 彼杵の港に鯨問屋があったのは長崎街道を経て九州内陸部に陸送するのに都合がいい場所だった歴史の名残だろう、と納得。

本町通り商店街の喫茶店で一服休憩。
大村城址とか円融寺庭園は夕方には入れないかも、と思い、大村で宿を取り明朝巡ることにして、夕暮れまでまだ時間があるので長崎街道をもう少し先に進むことにした。
円融寺庭園近くを素通り、観音道へ。
須田木町の墓地に長与俊達の墓への案内あり、どんな人物かと覗いてみる。江戸時代後期の藩医であり、長崎で西洋医学を学び種痘法を得て藩命で疱瘡所を開き、他藩に先駆けて牛種痘腕種法による予防に成功し、それまで「山揚げ」と称する隔離法しかなかった領内の患者を一掃した、と。
国立大村病院の近代的な大きな建物の横の坂を下り、夕暮れに岩松駅からＪＲで大村に戻る。